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倶楽部貴船

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お菊人形 -10-



「なんだ? お前たち!」
お菊と妙ちゃは、あわてて立ち上がった。
妙ちゃのヒザから、銀砂がポトポトと落ちた。
「誰がおるって?」
という声がして、また二人、少し身体の大きい男の子が木立の中から、ぬっと出てきた。
「お前ら、ここをどうして知っとるんだ」
一番大きい子が、ぐんと前に出てきて、二人の顔をじろっと見た。
妙ちゃは、お菊の手を握り、ぐず、ぐずっと鼻をすすりだした。
「わたし達が見つけたの」
お菊は小さい声で、でも、はっきり言った。
「見つけたのは、オレ達の方が先さ。勝手にここで遊ぶなよ」
「わかったか、遊ぶな。他の所へ行けよ!」
お菊は、仕方なくうなずいた。
妙ちゃの手がぶるぶるとふるえ出した。
「妙ちゃ、行こう」
お菊は、枝にある自分の着物と、妙ちゃの着物をとると、いそいで着た。
妙ちゃの指がふるえて、うまくヒモが結べないのを見てやると、黙って土手を上がり始めた。
「おい、待てよ。お前ら、山本のしゅうじゃないか? 
どうも川東じゃあ見かけん顔だ」
すると、一番先に土手を降りてきた子が
「そうだよ。こいつ、一年生だ。オレ、学校で見たことあるぞ」
と言った。
「山本のしゅうは、大西川で遊ぶなっていうことになっとるぞ。
お前ら、それを知らんのだな」
「そうだ、そうだ。大西川に入っちゃいかんのだに」
男の子達は口々に、
「出てけ、出てけ!」
と声を合わせて叫んだ。
お菊の心の中で、プチンと音を立てて何かが切れた。

─10─

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